ソーラーカー/ソーラーボートなど
超軽量モノコック構造体の設計製作

as of 11/21/97

はじめに

GHクラフトは、先端複合材料(Advanced Composite Material:ACM)特にカーボンファイバーなどを用いた製品の開発、 設計、製作を行っています。
超軽量の車体は、カーボンファイバーとハニカムコアを用いて構造を作り上げます。ここでは、設計、広報、材料、 材料入手方法について、初歩から上級者までを対象に、計画から完成までわかりやすく解説していきます。今まで、 多くのソーラーカーチームのメンバーが、当社の工場で専門のスタッフと協同で作業したり、また、学生の方は実習として ソーラーカーやエコランカーのCFRP車体を製作しています。ご希望の方はお問い合わせください。

1. 設計と計画:

まず、CFRP(カーボンファイバー強化プラスティックス)やハニカムサンドイッチ構造がなぜ優れている のか整理しておきましょう。

構造計画に対する考え方 :
軽い車体はシンプルに。構造を構成する部品(ビーム、フレーム、バルクヘッド、パネルなど)をできる限り少なくして、 接着箇所を減らすこと。重量軽減するためには小骨をたくさん入れないようにすることです。例えば、外板のコア材は比重が 十分小さいので、厚さを大きくして補強フレームを極力減らすことです。(このような構造をモノコック構造といいます。) また、部材にかかる応力は面内に分散するように配置し、応力が走る周囲を補強することも重要です。
限られた予算と日程のなかでいかに車体を製作するか :
大切なことは、何を最も優先するかを明確にすることです。見た目を良くするか、性能を取るか。限られた時間と 予算の中で、何を捨て何を確保するか、方針をしっかりたててください。多くの方が陥り易いことですが、枝葉末節に こだわって本筋を見失いがちです。それが個性でもあるのでしょうが、ソーラーカーによくある例では、ボディの形に こだわってウレタンやスチロールを削って磨き雌型を造り、FRPの美しいボディを造ることに大半の時間とエネルギーを 使ってしまうことがあります。その作業が空力性能にどのぐらい貢献するか、判断しなければなりません。
成績を重視するなら、トータルで軽く、何よりも空力的に優れたボディを考えることです。ソーラーパネルの効率は、 平らなものほど良く、空力性能との折り合いを付けるには全面投影面積をとにかく小さくする、車体のボリュームも小さくする、 シンプルな2次曲面で構成し、面の数を少なくする、無駄なフィレットアールを付けないなどが大切です。
CADを活用する :
超軽量車体に限ったことではありませんが、物を造るときCADはたいへん重要な役割を果たします。 まだ使ったことのない方には、安価なパソコンCADを是非お勧めします。 マッキントッシュやDOS-Vで動くAshlar Vellumというソフトを私は使っていますが、たいへん重宝しています。  CADの良いところは、書いた図をそのまま原寸図に出来、形の寸法指示をしなくても厳密な寸法をCADデータ自体が すでに持っていることです。1/1の出力をすれば、後の工程がとても楽になります。高度な3次元の曲面を表現できる 必要は必ずしもありません。また異なったソフトや機種間のデータのやり取りもほとんど問題はありません。できれば、 DXF、IGESなどのフォーマットでデータ出力出来るものを使うとより良いでしょう。


2. 材料:


3. 工法:

使用する材料により、それぞれに適した工法があります。ここでは、ソーラーカーの成形について、トピック的に取り上げます。


4. 2次接着、オーバーレイアップ:

実際の車体では、カウルやシャシーを始めから一体で造るのではなく、別々に成形した複数個の部材を、リベットや接着剤によ り組み合わせて造ることになります。このような接着作業をサンドイッチパネルの成形におけるスキンとコアの積層工程(これ も一種の接着作業です。)に対比して、2次接着と呼びます。サンドイッチパネルは、見かけ上は厚いしっかりしたパネルに見えますが、 実際には厚いコア材の両側に薄いスキン層があるだけなので、2次接着においては、このスキン同士をうまくつなげることが大事です。 図のように、クロス材によるハンドレイアップやコーナー材を用いた接着&リベットでつなぐわけですが、このようなコーナー部は、 力の集中しやすい所でもあるため充分な注意が必要です。基本的な考え方としては、コーナーRをなるべく大きくとり、接合材の厚さを いずれの場合もサンドイッチパネルのスキン層に+α分確保することです。

1) Tジョイント


2) コーナージョイント


5. 設計製作の例:

理想的な高性能シャシーの形を1996年WSCでホンダとアイシンのチームが見せてくれました。しかし、これを製作するために、 設計の段階でCAD/CAEに膨大な時間と費用を必要としますし、型治具製作費用もかなり高額となります。これに対して、 CFRPハニカム・サンドイッチ構造の高性能モノコック・シャシーをいかに経済的に製作するかということから開発された構造、 工法が、CF/ハニカムパネル接着リベット組み立て工法です。そのメリットは、以下のようにまとめられます。曲面形状を作りにくい 点を除けば、軽量で高剛性の車両を製作する最良の方法といえます。

具体的製作例

  1. 設計:1/10〜1/5のスケールで図面を描く。
    形の選択が重要です。平板を曲げて作れる2次曲面を組み合わせて 構成される多面体を想定します。
  2. 各パネルを展開し、図面のサイズの各平面をボール紙もしくは、スチレンペーパー等から切り出し、セロテープなどで組み立てる。
  3. 上記の工程から、図面へフィードバックして、図面精度を上げる。
  4. 各平面パネルの原寸図を描く。パネルを2.7mmか4mmぐらいの合板から切り出し、仮組み立てする。部品まで組み込み人間も乗って みれる1/1モックアップを作ってみる。メカや装置を実際に搭載し検討する。
  5. 組み立て治具を外見に合わせて合板(ベニヤなど)で製作する。
  6. モックアップを分解して1/1のテンプレートとし、サンドイッチパネルを購入するか、製作し切り出す。
  7. 治具のなかで瞬間接着剤等を使ってパネルを仮止め、組み立てする。
  8. GFまたはCFのテープとエポキシ樹脂で図のように2次接着する。
  9. フレーム、バルクヘッドなどの構造材を2次接着する。
  10. ひっくり返して外側から2次接着する。
  11. 全体をサンディング、脱脂して、ウレタンまたはエポキシ系のシーラーを塗付する。
  12. サンディングシーラーまたはサーフェーサーを塗付、上塗をする。

以上のように、工程を進めます。後は今回の記事を参考に工夫してみてください。


6. 自作家用の部品/材料/その他もろもろの仕入先:


品名
仕入れ先
Phone
FAX
先端複合材料、成形用副資材(バキュームバックなど一式)エポキシ樹脂(WEST SYSTEM) など: ジーエイチクラフト 0550-89-8680 0550-89-8682
航空部品一般 Air Craft Spruce &. Specialty Company 1-714-870-7551 1-714-871-7289
(201W Truslow Ave. Fullerton, CA92632 U.S.A)
WWW:http://www.aircraft-spruce.com

*エアクラフトスプルース社は、アメリカの自作飛行機の材料通信販売店です。ここのカタログがあると何かと便利です。 軽飛行機の部品、材料、自作用図面を読むとたいへん参考になります。工作をする場所、設計、段取りから丁寧に 説明されているので、この通りに作業すると、実際に空を飛べる飛行機が出来ることが納得出来ます。ここから始めるのとかえって 早道かもしれません。


以上をヒントにして、素晴しい車体が出来ることを期待しています。ご質問、ご要望などがありましたら、当社へご連絡ください。

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